エルグランド ロイヤルラインの中古車事情の真実！維持費と注意点を解説

「今のミニバンはどれも似たり寄ったりでつまらない」「もっと個性的で、乗っているだけで特別な気分になれる車はないか」。もしあなたがそんな風に考えて中古車サイトを巡回しているなら、日産が生み出した伝説の特装車、エルグランドの「ロイヤルライン」にたどり着いたのは必然かもしれません。

正直に言いますと。エルグランドのロイヤルラインやVIP仕様を中古で手に入れることは、単なる車の購入というよりは、一つの「ロマンへの投資」に近いです。4人乗り仕様という贅沢極まりない空間構成、かつての権力者たちが愛した重厚な雰囲気、そして何より、現代の効率重視の車作りでは絶対に生まれない「無駄（＝豊かさ）」がそこにはあります。

しかし、その一方で、「古い日産車」特有の維持管理の難しさ、部品供給の壁、そして容赦なくのしかかる税金の重課など、クリアすべきハードルが高いのも事実です。

この記事では、エルグランド ロイヤルラインの中古車を検討しているあなたが、購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、維持費のリアルな数字から、固有のトラブル事例、そして賢い買い方まで、私が持てる知識を全てシェアします。どうぞ、コーヒーでも飲みながらじっくりとお付き合いください。

幻のエルグランドのロイヤルライン中古車の魅力

まずは、なぜこれほどまでに「ロイヤルライン」や「VIP仕様」が一部のファンの心を掴んで離さないのか、その唯一無二の世界観について深掘りしていきましょう。

現行のアルファードやレクサスLMにも通じる「ショーファードリブン（運転手付きの車）」というコンセプトを、20年以上も前に実現していた日産の先見性には、改めて驚かされます。

伝説的な4人乗り仕様の豪華内装

エルグランド ロイヤルラインの真骨頂は、なんといってもそのインテリアにあります。通常であれば8人が乗れる広大なキャビンスペースを、たった4人（あるいはドライバーを除けば実質1〜2人のVIP）のために使い切るという贅沢さ。これは、現代の高級ミニバン市場においても、1,500万円を超えるような最上級グレードでしか味わえない特権です。

特に初代E50型のロイヤルライン（1998年発売）の内装は、工業製品というよりは「応接室」と呼ぶにふさわしい仕上がりです。最大の特徴は、前席と後席の間を物理的に仕切る専用パーティションの存在です。これにより、運転席からの視線や会話を完全に遮断し、後席は完全なプライベート空間となります。パーティションには電動昇降ガラスが組み込まれており、必要に応じてドライバーと会話することも可能ですが、基本的には「閉ざされた聖域」として機能します。

後席に鎮座するのは、航空機のファーストクラス、あるいは高級ホテルのラウンジチェアを彷彿とさせる大型の専用キャプテンシートです。興味深いのは、左右で機能が異なる点です。右側のシートは「エグゼクティブシート」として位置付けられ、移動中に書類に目を通したりサインをしたりするためのライティングデスクや、専用の読書灯、さらにはPC用電源まで完備されています。

一方で左側のシートは「リラクゼーションシート」となっており、電動オットマンや背中のツボを刺激するマッサージ機能が内蔵されています。助手席を最大限前方にスライドさせれば、足を前方に投げ出して仮眠をとることも可能です。

レトロフューチャーなAV装備： E50型などの当時モノには、VHSビデオデッキやブラウン管テレビ、カセットデッキなどがそのまま残っている個体も多いです。実用性という意味では現代のスマホには敵いませんが、この「当時の最先端」がそのままタイムカプセルのように残っていること自体に、えも言われぬ魅力を感じるマニアも少なくありません。アナログなスイッチの感触や、独特の作動音を楽しむのも、この車ならではのオーナーシップと言えるでしょう。

E50とE51のVIP仕様を比較

「エルグランド ロイヤルライン 中古」と検索される方の多くは、初代E50型のロイヤルラインをイメージされているかと思いますが、実際の中古車市場では、後継モデルであるE51型の「VIP」仕様も比較対象に入ってきます。これらは同じ「VIP向けミニバン」でありながら、そのキャラクターは大きく異なります。

世代	E50型 ロイヤルライン	E51型 VIP
デザイン・雰囲気	重厚・威厳・クラシック 角ばったボディと押し出しの強いグリル。公用車のようなフォーマルな印象が強い。	洗練・モダン・スポーティ 流麗なラインと低重心なスタイル。ドライバーズカーとしての色気も兼ね備えている。
室内空間の思想	完全個室型（パーティション重視） 「走る執務室」として、居住性よりもプライバシーと格式を優先した設計。	開放型ラウンジ（パーティション少なめ） パーティションが無い（または簡易的な）仕様が多く、広々とした空間を楽しむ設計。
走行メカニズム	FRベース（リジッド/5リンク） トラック由来の頑丈さがあるが、乗り心地には独特の揺れが残る場合も。	専用FRプラットフォーム（マルチリンク） 4輪独立懸架により、高級セダン並みの吸い付くような走りを実現。
ターゲット層	政治家、企業の重役、レトロカー愛好家	ベンチャー社長、芸能人、走りを愛するパパ

E50型ロイヤルラインは、その希少性と「パーティション付き」という分かりやすいVIP感から、コレクターズアイテムとしての側面が強くなっています。対してE51型VIPは、マルチリンク式サスペンションによる圧倒的な走行性能の良さが売りです。

「世界最速のVIPミニバン」と呼ばれたこともあるほどで、高速道路での安定感は現代のミニバンと比べても遜色ありません。もしあなたが、「後ろに乗るだけでなく、自分でハンドルを握ってドライブも楽しみたい」と考えるなら、E51型の方が満足度は高いかもしれません。

気になる実燃費と走行スペック

さて、ここからは少し現実的で、耳の痛い話をしなければなりません。エルグランド ロイヤルライン、およびVIP仕様を所有する上で、最も覚悟が必要なのが「燃費」です。カタログスペック云々ではなく、実際にオーナーになった際のリアルな数字をお伝えします。

まず前提として、E50型（後期）およびE51型には、名機と呼ばれる3.5L V6エンジン（VQ35DE）が搭載されています。このエンジンはパワフルで滑らか、踏めばスポーツカーのような加速を見せてくれますが、その代償として燃料を大量に消費します。さらに、車両重量は2トンを軽く超え、4WDモデルであれば2.2トンクラスになります。

私の経験や、多くのオーナーの声を総合すると、市街地での実燃費はリッター5km〜6km程度と考えておくのが無難です。夏場にエアコンをガンガン効かせて渋滞にハマれば、リッター4km台に落ち込むことも覚悟してください。高速道路を法定速度で巡航して、ようやくリッター8km〜9km伸びれば御の字といったところです。

さらに追い打ちをかけるのが、指定燃料が基本的にハイオクガソリンであるという点です。レギュラーガソリンを入れても走ることは走りますが、パワーダウンやノッキングの原因となり、燃費も悪化するため推奨されません。昨今のガソリン価格高騰を考えると、満タン（約76リットル）にするたびに13,000円〜15,000円が飛んでいく計算になります。

年間走行距離1万kmの場合の燃料代試算（ハイオク180円/L、燃費6km/Lで計算）： 10,000km ÷ 6km/L × 180円 ＝ 年間約30万円 これは月額にすると約2.5万円です。ハイブリッドのミニバンならこの半額以下で済むことを考えると、この差額を「趣味代」として割り切れるかが、オーナーになれるかどうかの分かれ道です。

希少な中古車価格の相場と流通台数

次に、中古車市場における現状を見ていきましょう。「エルグランド ロイヤルライン 中古」で検索しても、なかなか物件が出てこないことに気づくはずです。それもそのはず、E50型ロイヤルラインは新車当時の販売台数も限られており、製造から20年以上が経過した今、現存する個体は極めて少なくなっています。

大手中古車検索サイト（カーセンサーやグーネットなど）を見ても、全国で掲載台数が「数台」あるいは「ゼロ」という時期も珍しくありません。市場に出回る個体は、大きく分けて二極化しています。

1. 極上のコレクターズカー： 走行距離が少なく、屋根付きガレージで大切に保管されてきた個体。内装の本革も生きており、外装の艶もある状態。こうした車両が出てきた場合、価格は150万円〜250万円、あるいはそれ以上の「応談」価格になることもあります。
   特に海外のJDM（日本仕様車）ブームの影響で、北米やアジアの富裕層が日本のオークションから買い付けていくケースも増えており、相場は上昇傾向にあります。
2. レストアベースの激安車： 走行距離が10万km、15万kmを超え、内外装に年式相応の傷みがある個体。これらは30万円〜60万円程度で取引されることもあります。一見お買い得に見えますが、後述する部品供給の問題や修理費を考えると、購入後の出費が車両価格の数倍になる「安物買いの銭失い」になるリスクが非常に高いです。

一方で、E51型のVIP仕様に関しては、まだ流通量は比較的安定しています。価格帯も幅広く、50万円〜150万円程度で十分に乗れる個体が見つかります。アルファードの「ロイヤルラウンジ」が中古市場でも500万円〜1,000万円以上することを考えれば、

E51型VIPのコストパフォーマンスは異常なほど高いと言えます。「ブランド名よりも実質的な豪華さと走りを取りたい」という方には、E51型が現実的かつ賢い選択肢になるでしょう。

現代に通じるカスタムの可能性

「古い車だから不便」と決めつけるのは早計です。むしろ、ベース車両を安く手に入れて、浮いた予算で自分好みに「現代化（レストモッド）」することこそ、中古のロイヤルラインを買う最大の楽しみかもしれません。

例えば、当時モノの古臭いナビゲーションシステムやアナログテレビは、思い切って取り外してしまいましょう。代わりに、最新のフローティングタイプの大型ディスプレイオーディオや、Androidナビをインストールすれば、GoogleマップもYouTubeも快適に使えます。後席のモニターも、HDMI入力対応の4Kモニターに換装し、Fire TV Stickなどを接続すれば、移動中はNetflixやPrime Videoが見放題のシアタールームに早変わりします。

また、最近注目されているのが「バンライフ」や「キャンピングカー」のベース車両としての活用です。ロイヤルラインやVIP仕様はもともと防音材や断熱材がしっかりと入っているため、静粛性や断熱性が商用バンとは段違いです。あえて後席の重厚なシートを取り払い（あるいは片側だけ残し）、床をフローリング張りにして、デスクワークができる「移動オフィス」を作ったり、大人二人がゆったり寝られる車中泊仕様に改造したりするのも面白いでしょう。

新車で800万円した高級車の作り込みを活かしつつ、自分のライフスタイルに合わせてDIYでアップデートしていく。そんな「大人のプラモデル」のような楽しみ方ができるのも、この車ならではの懐の深さなのです。

エルグランドのロイヤルライン中古購入の注意点

ここまでロイヤルラインの魅力を語ってきましたが、ここからはアクセルを緩めて、ブレーキペダルに足を乗せてください。購入ボタンを押す前に、絶対に知っておくべき「現実的なリスク」について、包み隠さずお話しします。

ここを無視して勢いだけで購入すると、納車された翌月から修理工場に入庫しっぱなし…なんてことになりかねません。

故障リスクと部品供給の現状

中古車購入において最も恐ろしいのは、「修理したくても部品がない」という事態です。そして残念ながら、E50型エルグランドに関しては、この状況がすでに現実のものとなっています。

日産に限らず、自動車メーカーの純正部品供給義務期間は一般的に生産終了から10年程度と言われています。E50型の生産終了は2002年ですから、すでに20年以上が経過しており、多くの部品が「製廃（製造廃止）」となっています。

エンジンや足回りの消耗品（ブレーキパッドやフィルター類、ベルト類）に関しては、他車種との共用部品や社外品（OEM品）が多く流通しているため、比較的なんとかなります。しかし、ECU（エンジンコントロールユニット）や各種センサー類などの電子部品が壊れると、途端に難易度が上がります。

E52型であればまだ年式が新しいので安心感はありますが、こちらはCVT（無段変速機）の不具合が持病として知られています。異音や変速ショックがある個体は避け、過去の整備履歴でCVTフルードが定期的に交換されているかを必ず確認してください。

重課される自動車税と維持費

古い大排気量車を所有する際の宿命ですが、日本の税制は古い車に対して非常に冷酷です。「グリーン化税制」により、新車登録から13年を経過したガソリン車は、自動車税が約15%重課されます。

エルグランドの3.5Lエンジンの場合、通常の自動車税額は58,000円ですが、13年超の重課対象となると、年間約66,700円に跳ね上がります。毎年5月にこの通知書が届くたびに、少し憂鬱な気分になるかもしれません。

さらに、2年に一度の車検時に支払う「自動車重量税」も、経過年数（13年超、18年超）に応じて段階的に高くなります。2トン超のクラスなので、18年超の車両であれば、重量税だけで50,400円（2年分）かかります。
（出典：国土交通省『自動車重量税の概要』）

これに加えて、先ほど試算したガソリン代、任意保険料、そして予期せぬ故障に備えた「修繕積立金」が必要です。車両本体価格が50万円で安く買えたとしても、年間の維持費だけでその車両価格を超えてしまうことも珍しくありません。「車両価格の安さ」に釣られるのではなく、「維持費を払い続けられる経済力と情熱」があるかを自問自答してください。

失敗しない中古車の選び方

「リスクは承知の上だ。それでも俺はロイヤルラインに乗りたい！」という勇気ある方へ。私がもし今、自分用にエルグランドのロイヤルラインやVIPを探すとしたら、以下の3点を徹底的にチェックします。これは、ハズレ個体を引かないための最低限の防衛策です。

1. 下回りの錆（サビ）を徹底確認する

エンジンは直せても、ボディの腐食は直せません。特にE50/E51型は、リアサスペンションのメンバー取り付け部や、サイドシルの裏側などが腐食しやすい傾向があります。雪国で使用されていた車両や、沿岸部出身の車両は要注意です。販売店でリフトアップしてもらうか、スマホで下回りの写真を撮って、茶色いボロボロの錆がないか確認してください。フレームに穴が開いていたら、その車は「死に体」です。

2. 電装品の動作確認を遠慮なく行う

商談時に「バッテリーが上がっていて動かせない」と言われても、ジャンプスターターを繋いでもらって全てのスイッチを確認してください。パワーウィンドウ、電動カーテン、サンルーフ、電動シート、オットマン、エアコン（前後とも冷風が出るか）。これらが動かない場合、修理費は一つにつき数万円〜10万円コースです。「納車までに直します」と言質を取るか、その分値引き交渉をする材料にしましょう。

3. 整備記録簿（メンテナンスノート）の履歴を追う

「ワンオーナー」や「記録簿あり」は大きな加点ポイントです。特に重要なのは、オイル交換の頻度と、ATF/CVTフルードの交換歴です。こまめに消耗品を変えていたオーナーの車は、多少走行距離が伸びていても調子が良いことが多いです。逆に、記録簿が全くない車は、どんな扱いを受けてきたか分からないブラックボックスなので、避けたほうが賢明です。

購入資金を作る愛車の一括査定

もし、あなたがエルグランドのロイヤルラインやVIP仕様を購入するために、今乗っている愛車を手放そうと考えているなら、一つだけアドバイスがあります。それは、「販売店の下取りに出す前に、必ず買取相場を調べる」ことです。

中古車販売店での下取りは、手続きがワンストップで楽ですが、査定額に関しては「言い値」になりがちで、相場よりも低く見積もられるケースが多々あります。特に、これから維持費のかかる車を買うのですから、手元の軍資金は1円でも多く確保しておくべきです。

私がいつも友人におすすめしているのは、「ズバット車買取比較」のような一括査定サービスの活用です。スマホから簡単な情報を入力するだけで、最大10社の買取業者があなたの車を査定してくれます。複数の業者が競合することで、オークション相場ギリギリ、あるいはそれ以上の高値がつく可能性が高まります。

古い車や過走行車であっても諦めないでください。日本車は海外で絶大な人気があり、輸出ルートを持っている業者なら、驚くような値段をつけてくれることがあります。一括査定で数十万円の差が出れば、そのお金でエルグランドのタイヤを新品のレグノに交換したり、最新のナビを入れたり、あるいは最初の車検費用に充てたりできます。賢く資金を作って、万全の状態でロイヤルラインライフをスタートさせましょう。

結論：エルグランド ロイヤルラインの中古車は買いか

長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。結論として、エルグランドのロイヤルラインおよびVIP仕様は、単に「A地点からB地点へ移動する道具」として考えるなら、リスクが高く、コストパフォーマンスの悪い選択肢と言わざるを得ません。合理的に考えれば、最新のミニバンや、燃費の良いコンパクトカーを選ぶべきでしょう。

しかし、車選びは理屈だけではありません。あの時代の車にしかない、コストダウンを知らない「濃厚な作り込み」や、特別な空間を所有しているという「優越感」、そして何より、古き良き日産の「魂」を感じたいと願う方にとっては、代わりの効かない一生モノの宝物になるはずです。

部品が出ない苦労、ガソリンスタンドに通う頻度の高さ、税金の通知書…それら全ての「手のかかる部分」さえも、「世話の焼ける相棒だ」と笑って許せる度量があるなら、間違いなく「買い」です。

街中ですれ違うことのない、あなただけの「動く要塞」を手に入れて、優雅で特別なカーライフを楽しんでください。ただし、最終的なハンコを押すときは、ご自身の予算と奥様の顔色をよく伺って、慎重に決断してくださいね。

あなたのロイヤルライン探しが、最高の一台との出会いになることを心から願っています。